2017.05.08 Mon

第12回 中山裕子さん 「ヨルダンで気付かされた学ぶことの意味」

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PROFILE

中山裕子さん。東京都出身。旅行会社勤務後、2012年からJICAの海外青年協力隊員としてヨルダンで日本語を教える。現在、日本語学校に勤務する傍ら、大学院で日本語教育を学んでいる。



学ぶことは楽しい。知らなかったことがわかり、できなかったことができるようになる。子どもの頃からそう感じていた中山裕子さんだが、学校生活は楽しいものではなかった。

「勉強が好きだと言ったら変わった子扱いされ、良い成績を取るたびに周りが離れていく感覚があって。なかなかクラスに溶け込めませんでした。クラスメートとはつながっていないけど、私は世界の人々とつながっている、つながりたいといつも妄想してました(笑)」。

大学生の頃、ドイツに語学留学し、海外で働きたいと旅行会社に就職した。だが、海外ツアーに添乗しても、常に時間に追われ、ツアー客、現地スタッフ、会社の同僚たちとつながっているという充実感はなかった。

そんな頃、会社を辞めた同僚が日本語教師になったと聞き、どんな仕事なのか調べてみた。

「日本語や日本の文化を教え、海外でも働ける。これだって思いました」。

早速、仕事と並行し、日本語教師の養成講座に通い始めた。

「どんなマニアックな質問をしても、先生方がうれしそうに答えてくれる。ここでは、私、頑張っていいんだと思えたんです。クラスメートと勉強会を開いたり、ICT教育に興味があったのでTwitterやポッドキャストで日本語教育の情報を発信したり、突然、人間関係が広がっていきました」。

2010年9月に5年勤めた会社を辞め、都内の日本語学校で教えた後、海外青年協力隊に応募。ヨルダンへの派遣が決まった。

幸せになるための学び

12年6月、ヨルダンの首都アンマンに到着。朝は礼拝の合図であるアザーンという呼び掛けで起こされた。

日本語は、午前中にヨルダン大学で、夕方に一般人への公開講座で教えた。休みの日も、自分たちで脚本を書いた日本語ドラマを撮影したり、『恋するフォーチュンクッキー』を踊ったり、カラオケ大会やアニメ上映会などのイベントや活動をよく行った。

授業では日本語が大好きだという学生たちの気持ちが伝わってきた。

「特に、男子学生の中には、出世のために勉強しなければといったプレッシャーに潰されそうな子も多くいます。彼らから『日本語を勉強している時間は本当に楽しい。ここは人生を楽しめる場所なんです』と言われ、語学は幸せになるための道具にもなるんだって気付かされたんです」。

一方で、支援は他国がしてくれるもの、自分たちは待っていればいいといった姿勢が学校だけでなく、国全体から感じられ、少しでも変えられないかと思った。

「イベントを開催する時は、ボランティアを募って、あなたたちが主役なんだよって伝えました。『なんで先生がやってくれないの』と不満げな学生もいましたが、積極的に関わろうとしてくれる人も出てきました。私たちがいなくても、日本語教育が続いていくようにヨルダン人日本語教師の養成にも取り組みました」。

帰国して3年経つが、学生とは今でも連絡を取り合っている。

「日本語学校で教えながら、この春から自律学習についての研究を大学院で始めたところです。日本語を学べる場所がない遠隔地にいる学習者でも、ICTを利用し、世界中の日本語好きな仲間と一緒に学べるようにしたいんです。世界の日本語学習者をつなげ、学びの楽しさを広めていきたいと思っています」。


取材・文◆村上 充

DATA
ヨルダン
日本語学習者数166人
日本語教育機関3機関
日本語教師数9人
※国際交流基金2015年度日本語教育機関調査結果より



大学の学生たちに囲まれて。日本語を学ぶ学生の割合は女性7に対し男性3。アニメから伝統文化まで日本の文化に興味を持つ学生が多い












☆本記事は、語学学習や異文化情報が満載のクラブアルク会員誌『マガジンアルク』にも掲載されています。



http://www.alc.co.jp/jpn/article/aitoheiwa/img/womanFIX_360x70.jpg

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