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「できる日本語」がよくわかる!

「できる日本語」シリーズは、現場教師によって作られた「学習者と教師のため」の画期的な教科書です。「場面・トピックシラバス」と、「文法シラバス」の融合を図ることを目指して作られたため、コミュニケーション力はもちろん言語的知識もしっかり身につけることができます。そしてなにより、学習者も教師も「わくわくしながら」学習を進めることができる教材、それが「できる日本語」です。

PROFILE

嶋田和子

嶋田和子

「できる日本語」シリーズ(アルク)監修。一般社団法人アクラス日本語教育研究所代表理事。2012年3月までイーストウエスト日本語学校副校長。外資系銀行勤務の後、専業主婦を経て日本語教師。現在は、日本語教育業界をリードするベテランの一人として学習者への日本語教育はもちろん、教師養成にも当たる。『目指せ、日本語教師力アップ! ―OPIでいきいき授業』(ひつじ書房)など、著書多数。

現場では未だに「わかっているのに、使えない日本語学習者が多くて......」といった声がよく聞かれます。2010年度から新しくなった日本語能力試験は「課題遂行のための言語的コミュニケーション力」を測定対象能力にしているのですが、それでも旧態依然とした「試験のための詰め込み授業」をやっている現場も多々あるようです。

今、世界の語学教育は「その言語を使って、何が、どのように"できるのか"」という熟達度を重視する教育へと変わってきています。学習目標も「漢字2000字、語彙10000語習得」といった表し方ではなく、言語活動を重視し、「能力記述文」(Can-do-statement)で示されるようになりました。新しい日本語能力試験でも「Can-doリスト」を設け、記述例として次のように述べています。

●聞く=学校や職場、公共の場所でのアナウンスを聞いて、大まかな内容が理解できる

●話す=アルバイトや仕事の面接などで、希望や経験を詳しく述べることができる

●読む=関心のある話題に関する新聞や雑誌の記事を読んで、内容が理解できる

●書く=感謝や謝罪、感情を伝える手紙やメールが書ける

授業が終わった学習者が「今日はこれができるようになった!」と達成感を持てることが、どれだけ学習意欲につながるかしれません。こうした「できること(Can-do)」の積み重ねがコミュニケーション力の土台となっていくのです。

「わくわくする授業」の妨げになっている原因の一つとして、「文型至上主義」を挙げることができます。タ形を導入し、「~たことがあります」「~たり、~たり」「~たあとで」とタ形を使った文型を次々に学んでいきます。こうした文型をしっかり覚えたところで、それを使った応用会話が進められるのですが、これでは「文型が主役」の授業になってしまいます。

ここで発想の転換を図ってみましょう。まずは、ある場面・状況を提示し、「こんな時、何て言えばいいんだろう」と学習者自身が考え、発話するところから始めるのが『できる日本語』です。知っている日本語を使って、チャレンジした後でCDを聞き、「そうか!そう言えばいいんだ!」「へえ、そんな言い方もあるんだ!」と学習者自身が発見することによって、学習意欲も高まります(もちろん発見できなくてもOK。教師とのやり取りから、学習者の気づきが生まれます)。つまり、「はじめに文型ありき」から抜け出し、「タスク先行型」へと移行することによって、より生き生きとした授業展開が可能になるのです。

皆さんは、「記憶に残る割合」について聞いたことがありますか。「聞いたこと=10%、見たこと=15%、聞いて見たとき=20%、話し合ったとき=40%、体験したとき=80%、教えたとき=90%」と吉田新一郎氏は言っています(『効果10倍の〈教える〉技術』p.27)。受け身の姿勢ではなく、学習者が能動的に、自律的に学んでこそ効果があると言えます。

こうした言語活動を重視した教育実践で大切なことは、教師が教え込むという形態から、「学び合うこと」をめざした授業スタイルです。人は自ら学ぶ力を持っているのであり、「自らの声」を発する機会があるからこそ日本語授業はわくわくするものになっていきます。そのためには教室をコミュニティーにし、何でも言い合える環境づくりをすることが重要です。そして、さらには教室と外のコミュニティーとつなぐ努力も求められます。

その土台になるのは「対話」なのですが、どうやらこの考え方が教育現場ではなかなか根付いていないようです。平田オリザ氏は会話と対話は違うものであり、日本語教育においては「おそらく、これまでは、教える側にも、取り立てて「対話」という概念に対する意識がなかったのではないか」と言っています(『対話とプロフィシェンシー』p.34)。

私は「対話」とは「異なる価値観を持った人同士が話し合いを通して、他者理解・自己理解を深め、新たな価値観を作り上げていくこと」であると定義しています。AかBかではなく、ともに作り上げていくところに意義があると言えます。こうした「対話」を重視した日本語学習こそが「わくわくする授業」のベースになっているのではないでしょうか。

「できる日本語」シリーズは、「自分のこと/自分の考えを伝える力」「伝え合う・語り合う日本語力」を身につけることを目的にし、日本語によるコミュニケーションの中でも「対話力」に重きをおき、人とつながる力を養うことをめざした教科書です。だからこそ「できる日本語」を使うと、学習者も教師自身もわくわくした授業展開が可能になるのです。

教科書が変わると、教師が変わる。教師が変わると、学習者が変わる。

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