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Lesson18 日本人医療者による英訳の傾向と対策

執筆 押味貴之
Lesson18 日本人医療者による英訳の傾向と対策

「ほかに病院にかかっていますか?」
皆さんならこの日本語をどのような英語にしますか? おそらく、多くの方は“Are you going to any other hospitals?”とすることでしょう。このほかにも「きちんと栄養を取ってくださいね。」なら“Please take enough nutrition.”となることが多いのではないでしょうか? 残念ながらどちらも日本語の意味とは異なり、正しい英訳とは言えません。では、このような英訳は、どのような原因で起こり、それを克服するためにはどのような対策をすれば良いのでしょう? そこで今回は、日本人医療者の英訳に見られる傾向を指摘し、それに対する有効な解決策をご紹介します。

「文法構造」ではなく、「意味構造」を捉える
では、まず次の日本語の英訳を考えてみましょう。

「胃カメラの検査を行った結果、お父様のご病気は早期の胃ガンと診断されました。」

この文章を英訳するとき、翻訳に慣れていない方は、おそらく以下のように文法構造を捉えると思います。

  「胃カメラの検査」 「行われた」
Gastric endoscopy was performed

  「お父様のご病気」 「早期の胃ガンと診断された」
your father's disease was diagnosed as early stomach cancer

そして、それらをつなげて“Gastric endoscopy was performed on your father, and his disease was diagnosed as early stomach cancer.”としてしまうのです。

これは、翻訳をする際に日本語の「文法構造」に縛られていることを意味しています。本来、翻訳というのは「その言語であれば何と言うのか」を考える作業です。言い換えるならば「原文の意味構造を捉えて、翻訳言語でその意味構造を再生する」ということです。 日本語と英語では、その「文法構造」が異なります。しかし、日本語であっても英語であっても、文章が意味する内容(意味構造)は同じです。英訳において最も重要なのは、「日本語の原文がどのような状況を指しているか(意味構造)を捉え、それを表現するのに最も適した英語を作っていく」ということなのです。

上記の文章の英訳に関しても、日本語の原文の文法構造から一度離れ、それがどのような状況を指しているかという「意味構造」をしっかりと捉えます。その上で「この状況を英語でならどのように表現するのか」を考えます。そうすることによって“The gastric endoscopy shows your father has early form of stomach cancer.”という「自然な」英訳が生まれるのです。


名詞に影響されず、動詞を上手く活用する
「文法構造に捕われている」ということに加え、日本人医療者の多くには「名詞に強く影響される」という傾向が見られます。たとえば、「腫瘍の全摘出を行いました。」という文の英訳を考えるとき、多くの方が「全摘出」という名詞を辞書で調べ、それに「行う」という動詞をつけるという作業を行います。そうすると“We performed the total removal of the tumor.”というような、重々しい感じの不自然な英語が出来てしまいます。

日本の医学英語の辞書には名詞ばかりが載っていて、動詞はあまり紹介されていません。しかし、より自然な英訳を目指すのであれば、動詞を上手く活用することを心がけましょう。先程の文章であれば、「腫瘍をすべて摘出しました。」というように意味構造を捉え、「摘出する」=“remove”という動詞を活かして“We completely removed the tumor.”とした方がより自然で簡潔な英語になります。

しかし、いくら「意味構造を捉え、動詞を上手く活用する」という点に気を使ったとしても、「この場面なら英語で何と言うか」という表現の蓄積がなければ、自然な英訳は不可能です。冒頭の「ほかの病院に通っていますか?」の英訳に関しても“Are you seeing any other doctors?”(“Are you going to any other hospitals?”では「大病院に通っていますか?」の意)という表現を、そして「きちんと栄養を取ってくださいね。」には“Please take vitamins and minerals.”という、日本語からはちょっと思いつかない表現を知っておく必要があります。この連載でも、そのような表現をできるだけ多く紹介していきたいと思いますので、これからもぜひご活用ください。



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