前回は学習指導要領改訂の方針となる3つの柱について説明し、これからは従来のように知識をつけるだけでは不十分で、その知識を活用し、生徒たちが主体的に学び取り組むことが大切になると述べました。
また、そのような結果をもたらすための手段としてアクティブ・ラーニング(AL)についても触れました。今回はこのALについてもう少しお話ししましょう。
そもそもALという言葉が頻繁に用いられるようになったのは2012年の中央教育審議会答申『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)』*で用いられて以降のことで、その後に小・中・高における教育についても使われるようになりました。
なお、その答申の資料の「用語集」では、ALは以下のように定義づけられています。
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修へ参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、論理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。
発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。
この定義から分かるように、ここでの「アクティブ」は動き回ることではなく、受動的(パッシブ)と対比される「能動的」という意味を表しています。
さらに、さまざまな教え方や教室活動がこれに含まれるため、一つの決まったやり方を指しているのではないということも分かるでしょう。
なお、これが大学教育についての答申であるため、「先生に教わる」というニュアンスの強い「学習」ではなく、「自ら学問を修める」という意味を表す「学修」という表現が用いられているのですが、実はこの「学修」という表現こそがまさにALの本質を表しているとも言えます。
つまり、これからの教育に求められているのは「学習から学修への転換」であり、その中で先生が果たす役割も「知識や技能の伝達者」ではなく、「生徒の学びの補助者」となるため「teacherからfacilitaorへの転換」が必要になります。
そして、子どもたちの学修を成功させるには、このような変化を教師や保護者といった大人たちがしっかり理解しておくことが大切なのです。
* http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm
<著者プロフィール>
藤田 保
上智大学言語教育研究センター教授。専門は応用言語学(バイリンガリズム)と外国語教育。アルク キッズ事業アドバイザー。
NPO 小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)理事。著書に『英語教師のためのワークブック』『先生のための英語練習ブック』(共にアルク)。
※アルクでは、「アルク Kiddy CAT英語教室」に通う生徒の保護者向け情報誌 『えいごのじかん』をお配りしています。本企画はその冊子から、メルマガ読者の皆さんに紹介したい記事を取り上げ、再構成したものです。 |