「できる日本語」がよくわかる!

インタビュー 教科書採用現場に聞く!

使用している教科書を変更する――それは、学校にとっても教師にとっても一大事です。変更という決断までにどんなことを考え、実行したのでしょうか。また、実際に使い始めてから、学校や教師に何が起きたのでしょうか。「できる日本語」シリーズを使い始めた採用現場の先生方に、その舞台裏を伺いました。

Interview Vol.1 愛和外語学院

12/11/22 UP

“今あるものをゼロに戻して考えてみてください”

“今あるものをゼロに戻して考えてみてください”

福岡市にある愛和外語学院の教務部長の深江新太郎さんと、妹川幸代さんに、教科書変更の経緯と『できる日本語 初級 本冊』を終えての感想をお尋ねしました。同校では、2012年4月から「できる日本語」シリーズを使った授業を始めているそうです。

教科書の変更を考え始めたのはいつごろ、どんなきっかけだったのですか。

深江:

実のところ、初めて日本語学校の教壇に立った時からずっと、教科書をベースにして場面を設定し、文型を提示して練習するという授業に、違和感をおぼえていました。それを解くために、さまざまな講義や研修を受けてきた中で「できる日本語」シリーズのことを知りました。

振り返ると、私が塾講師から日本語教師に転身した6年ほど前はちょうど、日本語能力試験の改訂などもあって、日本語教育の過渡期にありました。自分も変革を推し進めていく力になれたらと、ずっと思ってきました。

「できる日本語」シリーズを選んだ決め手は何ですか。

深江:

私は、教科書を使わない授業が理想だと思うのですが、クラス運営は、学校という組織で行うので、それでは成り立ちません。そこで、教務にあたる3人で集まり、まず、教科書を使わないとしたら、自分たちはどんな授業をしたいのかを、話し合いました。結果、本校で行いたいのは、学習者が日本語を学ぶことで地域社会に入っていけるような授業だ、という結論を導き、それに合致した「できる日本語」シリーズを選んだわけです。

教育現場の人たちが現場の視点で作っていて、どんな学び手にとっても使いやすい“ユニバーサルデザイン”の教科書だということも大きな決め手になりました。

検討を始めてから実際に採用するまでにどのくらい時間がかかりましたか。

深江:

議論は今年の1月から3月の間、毎週1回2時間、毎回の課題を決めて繰り返し行いました。3カ月十分話し合って、その後は早かったですよ。3月終わりに決断し、4月の新学期には使い始めていましたので。

学内には、教科書を変えることに対する反対意見もあったのではないでしょうか。

深江:

組織である以上必ず反対意見は出ます。特に、長く経験を重ねてきた教師にとっては、今までの文型積み上げ方式でのやり方が財産であり、支えになっているわけですから、当然だと思います。対話を重ねることと、勉強会を繰り返していくことの重要性は、今も強く感じています。

一方で、一度方針を表に出すと、共感する人が自然と集うものです。不満も出ましたが、経験は重視せず、新しいやり方ができる人に授業を任せるようにしました。誰に何と言われてもやり通すこと。それは組織を変える時に、舵を取る者の仕事だと思うのです。

半年が経ち、初級の教科書を終えて、学内に変化はありますか。

深江:

「できる日本語」シリーズは、教師が試される教科書だと感じます。買い物に行く、大学生に質問に行くなどといった活動は、これまでの教科書ではしたことがありません。でも、「できる日本語」がそれを要求してくるので(笑)、教師たちは、学校事務局と費用の交渉をしたり、大学に相談に行ったりといった折衝を繰り返しながら応えています。当然これまで以上に時間もかかりますが、最後まで徹底してクリエイティブにやっていこうと励んでいます。

学生たちはどうですか。

妹川:

私が感じているのは、「やらされている感」がないことです。 この教科書の例文には訳がありませんが、学生たちはそれぞれ調べて授業に来ます。「どうせ最初のうちだけだろう」とみていたのですが、これが半年間ずっと続きました。さらに、アドバイスしたこともないのに、みんな「ことば」(各課にある語彙リスト)の末尾に、自分に必要と思う“マイワード”を書き加えていて驚きました。

本校の場合、毎日達成感が味わえるように、1日1つのスモールトピックを学べるようにカリキュラムを組み、スモールトピック3つが終わったところで、「できる!」(各課のまとめとなる総合的な活動)をやるのですが、みんなその日を楽しみにしているようなのです。

公開ラボ「できる日本語」シリーズの監修者である嶋田和子さん(アクラス日本語教育研究所)を招き、初級授業デザインの真髄に迫る参加者主体の対話の場「公開ラボ」を開催。「首都圏と異なり、福岡にはこうした教師の学びの場が少ないので、継続的に開催していこうと思います」(深江さん)

教科書を変更した感想は?

妹川:

よかったです。これまで学生からよく聞いた「教室ではわかるのに、外に出たらわかりません」という悩みを、今年は一度も聞いていません。福岡の場合は「方言がわかりません」というのがあるものの(笑)、アルバイト先や近所の人と楽しく話せているようで、それが何より嬉しいですね。

教科書変更を考えている学校の先生にアドバイスをお願いします。

深江:

今あるものをゼロに戻して考えてみてください、ということですね。

「どの教科書を使いますか」ではなく、「教科書がなかったら、授業をどうしますか」と考えてみることです。どんな授業をやりたいのか、どんな学校を造りたいのかを話し合って、今の教科書がその方向性に合うのであれば、変えなくていいと思います。

教科書がなければ「作ればいいじゃない」というのが基本なのですから。

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